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透明という色-9

-8 へ戻る 

 短かった夏が終わろうとしている。
 初夏の思い出を真夏の日差しが溶かし、空気中に漂う残滓で灰を満たしながら、藤巻は日常というゆるく張られた綱の上を歩き続けている。
 今日は日曜日だ。
 なべの底に残ったインスタントラーメンのスープを飲み干すと、藤巻は立ち上がりスタンドに立て掛けられたフェンダージャパンのテレキャスターを掴んだ。大学時代に藤巻がバイト代を貯めて買った相棒のエレキギターだ。ローズウッドの指板とスリートーンサンバーストのボディには白い埃がこびりつき、安物のライトゲージには茶色の錆が浮いている。戦死した英雄の剣を数百年後の未来に発掘したような感覚。
 弦を交換しレモンオイルで指板をふくとギターは再び息を吹き返した。アンプに繋ぎ、出力側にイヤホンを接続する。ゲインを絞り気味にしつつボリュームを回していくと、ジャキジャキとした軽快な音になる。
 藤巻は久しぶりに曲でも作ってみようかと思った。
 自分の心の中に存在する感情を表現するための曲――この曲が出来た時、もしかしたらそれを伝えるべき人がひょっこり現れるかもしれない。
「藤巻君、なかなかいい曲つくるんだね」
 少し上から目線でそう言って笑う彼女の姿が頭に浮かぶ。
 この曲に対する応えが藤巻の期待する応えと違っていたとしても構わない。
 感情や意思を表現する事が、自分の周りを作り変えて行くのだから。
 
 夏の終わりの空を見上げる。
 今の藤巻の心情に、その色はぴったりと合わさった。

 人は皆異なる色合いの意思を持つ。
 そこに透明という色はない。

【完結】
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プロフィール

幕田卓馬

Author:幕田卓馬
糖、脂質、プリン体、塩分などに気を配らないといけない歳になりました…若い頃の不摂生が原因でしょうか。まだ三十路、されど三十路!
そんな男が日々の合間に小説を書いています。

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