FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

となりのトトロ

金曜ロードショーで「となりのトトロ」がやっていたので、家族三人でなんとなくそれを観ていた。

嫁は「聖典と書いてナウシカと読む」って感じのジブリ好きなのだが、俺はそこまで興味があるわけじゃなく(売れてるものはなんとなく敬遠する捻くれ者)、トトロに至ってはちゃんと見たのは小学生以来だろうか。

しかしながら子供と一緒に安心して観れるのが国民的アニメのジブリ作品。

取引先の工場長の娘さん(息子と同い年)もトトロが大好きだって聞いていたし、車以外のものに興味をもってもらえればとの思惑もあって、家族での視聴を試みたわけだ。

結果、息子も「これトトロ? トトロいたー」とご満悦の様子で、胡座をかいた俺の膝の上に座ってテレビに釘付けになっていた。

しかしまぁ、十数年ぶりとはいえ様々なシーンが脳裏に焼き付いているらしく、それだけこの作品が子供の心をとらえる何かを持っているんだなと思った。

田舎の風景とか、ばあちゃんの話し方とか(この訛りにすごく心が癒された。田舎出身者万歳)、夏の風にそよぐ草木とか、そういうどこか懐かしい映像達は今の子供の目にはどのように映り、どのように心を動かすのだろうか。

原風景に対する郷愁なのか、見たことない新天地に立つような高揚感なのか…。

そして、大人になり親になって初めて感じたのは、さつきとめいの「お父さん」の素敵さだ。

子供の目線に立って、常に笑顔で居られることは、簡単なようでいて難しい。

それを実感しているからこそ、お父さんの娘二人に対する接し方に憧れを抱いた。

ちなみに観てて一番感動したのは、傘を持ってバス停で待っていた娘たちと家路を辿るシーンだったりする。
なんか、いい感じ。

自分の立ち位置が変わったことで、新たな感動を知れた。
それは自分の人間性が固定されたものではなく、常に移り変わっていくものだということだ。

子供がどんどん大きくなるように、親である自分もまた変化している。

良かれ悪かれ、その変化を受け入れていくしかないのだろう。

願わくば、子供にとってだけでも、理想の人間でありたい。


スポンサーサイト

No.26 ミノウスバ

さて寝るか、と寝室に向かったところ、俺の布団の上で一足先にお休みになっているガが一匹。

なかなかかわいいらしい姿をしたガである。

IMG_0924.jpg

調べてみると、どうやらミノウスバというガのようだ。

春頃マサキの木に幼虫が大量発生し、秋には羽化するらしい。

そして図鑑に載っていた幼虫の写真に既視感が…

そうそう、これは春に庭の生垣に大量発生したあの幼虫だ!

IMG_0290.jpg

その時撮った写真がこれなんだけど、当時は何の幼虫わからず「不明」のカテゴリに入れといたんだが…

それがここにきて正体が判明!!

点と点がつながった快感が脳内を駆け巡る!

これだよ、謎の答えが判明したこの瞬間に感じる最上のアハ体験!

これだから虫はやめられないっ!

興奮しすぎて妻に白い目で見られる、そんな秋の夜長。

どんびき!~曇天大学軽音楽部弾き語り部門~34

第34話「散らかった過去の後片付け(後編)」

「今の弾き語り部門見て、あいつはどう思うんかね」そんな言葉が口をついて出たのは、合宿帰りの車の中で満足そうに眠りこけてやがる後輩どもの姿が目に留まったからかもしれない。
疲れと眠気もあってか自分らしくない感傷が沸き起こってるなと、頭の上から俯瞰しているもう一人の俺が呆れた笑いを浮かべている。
三人から始まったこの部活だったが、気付けば四人の後輩が俺達の後ろを歩いていた。
俺達が居なくなっても、きっと弾き語り部門は続いていくんだろう。
「さあな」助手席に座るごっちんが応える。返答を期待しての言葉ではなかったが、助手席に座る仏頂面の耳には届いていたようだ「俺は、頼もしく感じているがな。あいつも、そう感じるんじゃないか?」付け加えられたごっちんの言葉が、自分の期待していた通りの言葉で、なんかむず痒さを覚えた。
「どうだかねぇ」だから俺は少し捻くれた言葉で返す「案外、もっと練習しろ! ってハッパかけられるんじゃねーの?」
「かもな」ごっちんはそう言って黙った。
しばらく車の走行音と、ローカルラジオDJの甲高い賑やかな声だけが車内に響く。
「直接知ってもらえばいい」低く聞き取りにくいごっちんの声がDJの声に被さる「俺達の今の音楽を、あいつにも聴いて貰えばいい」
そうだよな、と俺は思う。
確かに、聴いてもらうべきなのかもしれねーな。
あいつに聴いてもらって、そこで初めて、俺の中の弾き語り部門は感動のフィナーレをむかえるんじゃねーか?
でもな、今更…
「今更どの面下げて、あいつに声かけりゃいいんだよ」あの事があった直後であれば、或いはまだ関係を修復できたのかもしれない。メールやSNSで連絡を取り合うくらいにはなっていたかもしれない。
でももう、時間が経ち過ぎているんじゃないか?
関係を修復するには時間が経ち過ぎていて、かと言って何事もなかったかのように顔を付き合わすにはまだ傷跡が生々しい。
なんとも微妙な状態だ。
でも、俺達三年が弾き語り部門で居られるのはあと数ヶ月ってとこだし、次の学祭が最後のステージになるだろう。
それを逃したら、もう二度とあいつに言えないな。
俺達の弾き語り部門は永遠だ、って。
そんな俺の心中を察しているのか、ごっちんは何も言わなかった。

もしかしてあの時から、こんなシチュエーションを画策してたのかよ。
目の前に立つ予期せぬ人物をぼんやり眺めながら、俺はごっちんの策略にまんまと乗せられていた自分自身に呆れていた。

白いシャツの上に黒いカーディガンを羽織り紺色のスカートを履いた加奈は、以前のTシャツにジーンズのイメージとかけ離れていて、まるで別人を前にしているような感覚を覚えた。でもその視覚と感覚の不一致が、俺の平常心をこの冷めたハンバーグみたいなファミレスの椅子にくくりつけてくれているのかもしれない。加奈が目に前にいるという現実感が全くなく、どっか夢でも見てるんじゃねーかって気がしてくる。まともな状態だったら、どんな顔をして座ってりゃいいのかすらわからない。
「杉田くん、久しぶり」
隣に座る涼子と一頻り近況を伝えあった後で、加奈は斜め前に座る俺に笑いかけた。表情がどこか不自然だ。きっとこいつもどんな顔をすりゃいいのかわからないでいるんだろう。
「おう」そう応えて、次の言葉を繋げようとする。
『なんか雰囲気変わったな』これじゃ他意があるように思われるんじゃねーか?
『元気だったか?』オヤジじやあるまいし元気だからここにいるんだろーが。
『最近どうよ?』これじゃ唐突すぎやしねーか?
何を言えばいいのかわからず、ストローで飲み干したコーラの底に残った氷を弄ぶ。
「あたし、雰囲気変わったでしょ? 今家の近くの工場で事務やってて、これはそこの制服なんだ。でも普段のあたしははあの頃のまんま。全然成長してないんだよね」
「そうだな、顔はガキっぽい」昔を思い出して、憎まれ口を叩いてみる。
「ははっ、相変わらず口が悪いな」
なんだか必死にあの頃の自分たちを思い出して、それを演じているような空々しさを感じてしまう。大事な部分に目をそらし、見かけだけの思い出の中に浸ろうとしているような気がする。それじゃないだろ、俺の喉に引っかかっている小骨は。
俺は隣に座るごっちんを横目で見る。けっ、我関せずって顔しやがって。
「あ、そうそう、弾き語り部門に新入部員が4人も増えたのよ」途切れた会話の間を執り持つように涼子が口を挟む。涼子はこういう人間関係のバランス感覚が優れている。基本好き勝手にやってる俺ら三人の意見をまとめるのはいつもこいつだった「歌が上手いイケメンくんと、ギター初心者の女の子と、ピアノの女の子」
「え、3人しかいないの?」
「あ、それと、えーっと、メガネの男子」
平ちゃん、忘れられてるぞ…。
「そうそう、その4人が同じ2年生で、一緒に音楽頑張ってるみたい。なんだか、微笑ましくてね。まるで…」そこで涼子は言葉を切る。そして、一瞬、俺の目を見た。「まるで、1年の頃の私たちみたいだな、って」
あの頃にはもう二度と戻れないのかもしれない。
お互い立場は変わっちまったし、住んでる場所も違う。
でも、あの頃の事を思い出してゲラゲラ笑い合うことは出来るし、今から新しい関係を築いてくことだって当然出来るはずだ。
そのためには俺が、あの頃に溜まった膿を絞りださにゃならん。例えそれがいやーな痛みを伴おうとも、傷口を指先で摘んでやらねーと。
そんな事を考えていたら、まず言うべき言葉がある事に気がついた。それが適当なのかはわからんけど、鍵穴に差し込むには丁度いいかもしれない。
「お前のマーチン、元気にしてるぞ」あの時部室で加奈から譲り受けたギター。あの瞬間の続きが、古ぼけた扉が開かれるみたいに、2年の空白を経て再び始まった気がした。
「そっか、弾いてくれてんだ」
「まぁ、たまに」
「お菓子食べた手で触ってんじゃないの?」
「それはまぁ、たまに…」
「ひどいなぁ、せっかくこれからの弾き語り部門の繁栄を願って渡したのに」
加奈から譲り受けたギターを依り代にして、本当に向き合わなきゃならない瞬間の自分が欠伸を噛み殺して目を覚ます。バカみたいな面してんだろうな、今の俺。

「学祭、すっぽかして、すまんかった」

そう言葉に出して初めて、加奈の顔を正面から見ることが出来た。
一丁前に似合わない化粧をしている。でもその表情は、どっか大人びている気がした。前言撤回だな、と思う。
「こっちこそ、ごめん」
何がごめんなのかはわからない。でも加奈もまたあの時の何かを後悔していて、再びバカを言い合える四人に戻れるのを望んでいる事だけは理解できた。
簡単な事だ。
たった一言で俺たちの関係は氷解するのに、なぜ俺は今までそれを言えずにいたんだろうな。

視界の隅で、ごっちんが口の端だけでニヤリと笑った。

ファミレスを出ると、秋を感じさせる冷たい風が火照った首元の熱を奪う。
季節は予告もなく変わっていくねぇ、と俺が呟くと、そんな事ないよ季節の変化に気付けるか気付けないかだよ、と加奈が言う。杉田くんはお菓子の限定味で季節を感じればいいんじゃない?と涼子が笑い、うむ、とごっちんが頷く。
「秋といえば…」
「秋といえば?」加奈が首を傾げる。
「もうすぐ学祭なんだわ」
「ああ、もうそんな時期なんだ」感慨深そうに加奈が頷く。
「お前も遊びにこいよ」秋の夜空を見上げて俺は言う「新生弾き語り部門の演奏を聴かせてやるよ」
加奈の返答には興味がないふりをして、駐車場の隅っこの照明に照らされた植木のあたりをぼんやり見つめる。
「行くよ、絶対行く、有給とってでも」少し考えるそぶりを見せ、しかし力強く加奈は答えた「でも情けない演奏を聴かせるようだったら、ギター奪ってあたしが演奏するからね」
そう言って俺を見た加奈の目に、初めて会った頃の――ギターを始めた頃のギラギラした何かが見えた気がした。音楽で語りたい、自分の内面を吐き出したい、そういう感情が透けて見えるような気がした。
普通の言葉では語れない俺たちみたいな変わり者は、音楽という言葉でしか自分を語ることができない。だから俺たちは、息を吐くみたいに、友人と語らうみたいに、音楽を奏でる。
そうしなければ、押し込められた言葉の内圧で弾けてしまうから。

応えなきゃならんな、こいつの内側に溜まった言葉を解き放つような、あけすけで強引で力強い音楽でもって。
そう思うと、ハンドルを握る手に力が入った。

プロフィール

幕田卓馬

Author:幕田卓馬
糖、脂質、プリン体、塩分などに気を配らないといけない歳になりました…若い頃の不摂生が原因でしょうか。まだ三十路、されど三十路!
そんな男が日々の合間に小説を書いています。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。