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No.25 オオカマキリ

嫁が欲しいぜ。

草むらを彷徨いながら、腹の中に溜まったハリガネムシを吐き出すように俺は呟く。

以前は「俺の心と鎌もドキドキするほど光ってるぜ!」なんてオラついてたけど、嫁いない歴史=年齢を拗らせると、もはやそんな気力はどこかに消えちまったぜ。

そのくせ理想だけはどんどん膨らむ。
ああ、お尻が大きくて、くびれがキュッとなってて、緑色が鮮やかな女性が、コスモスの花のから落ちてきてくれないかな。

そしたら俺は、最高のクルマバッタモドキにヤマトシジミを添えて、彼女にご馳走してやるのに。

ほんと最近の女性ははバカばっかりだぜ。

ここにこんなにステキな男がいるっていうのに、誰も誘ってこないなんてな。

そりゃたしかに、少し翅が傷ついているが、これだって俺が修羅場を潜り抜けてきた証、いわば勲章だぜ。

ほんと、見る目がないぜ。

それにしても、さっきから俺を撮影しているこのニンゲンは何なんだ?

情けないツラしやがって。こういう弱っちい男は、どうせ嫁の尻に敷かれて、頭を叩かれながら生活してんだろうな。

哀れな男だぜ。

IMG_0905.jpg

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・


お、オオカマキリのオスじゃん。
翅に変なシミができててブサイクなやつだけど、写真撮っとこ。
そういや、カマキリって交尾のあとメスに食われる場合があるらしいよな。

うーん、哀れな男だぜ。
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どんびき!~曇天大学軽音楽部弾き語り部門~33

第33話「散らかった過去の後片付け(前編)」

「ありがとうごっちん‥」
杉田君は本日何度目になるかわからない感謝の言葉を繰り返した。

私ーー国府涼子と杉田君、ごっちんの三人は、杉田君の運転する車で隣県で行われるとあるイベント会場に向かっていた。
日本お菓子合戦〜秋の陣〜
ごっちんが入場チケットを3枚ゲットしてきたそのイベントは、杉田君曰くどうやら「堅あげポテトファンの間では幻のイベント」らしい。過去の期間限定フレーバーや、発売未定の試作フレーバーなど、様々なレア味を一挙に堪能できる、年一回のお菓子祭りとのこと。
なぜそんなイベントのチケットを入手してきたのか、そしてなぜ当然のように私が巻き込まれているのか、そんな沸き起こって然るべき疑問に対し、納得のいく答えを追求しても無駄だということは、この2人と付き合っていれば嫌でも身に染みてしまう。
しかし一つ不自然な点があるとすれば、この遠征の発端が唯我独尊の杉田君ではなく、基本的に杉田君に巻き込まれるポジションのはずのごっちんだということだ。チケットを手渡され、渋々参加を了承した時にごっちんが垣間見せたあの何かを企んでそうな目、それがどーしても引っかかる。

海沿いのサービスエリアで早めの昼食をとった。まだ11時前ということもあり、食堂は3席だけ家族連れで埋まっていて、あとは空席が小島みたいに浮いている。
「お菓子のために胃を空けておくように!」すっかりノリノリの杉田君である。昼食後、土産物売り場でご当地スナックを物色する杉田君をほっといて、海を眺めているごっちんの隣に並んだ。
「なにか、企んでるでしょ」
「なんの話だ?」
海を見たままそう答えるごっちんの横顔は、その返答とは裏腹に、脆く儚いシャボン玉に手を伸ばすような緊張感を帯びていた。何かをしようとしている、それはわかる。
そしてそれは、ごっちんの生真面目な性格からして悪意からくるものではない。
海は広かった。
遠くの方に見えるほんの少しの隆起が、岸に近づくに連れて白波へと変わり弾ける。
その繰り返しは、やがて岩肌を削り落としていく。
より強靭な、イシだけを残して。
心の表面の脆く柔らかな部分は時間が削り落としてくけれど、未だ残っているイシがあるのなら、彼らはそれに向き合わねばならない。
そう考えて、なんとなくだけれど、ごっちんの意図が読めた気がした。
「おい見ろよこれ! ヨーグルト味の堅あげポテトだってさ!」そう言って買い物袋の中身を見せびらかしている杉田くんは、多分そんなごっちんの思惑に気づいていない。

企業のイメージキャラクターのコスプレをした女性と並んで写真を撮りながら、杉田くんは満面の笑みを浮かべている。
子供じゃあるまいしとため息をつき、コスプレ女性のスカートが極端に短い事に気付き、それを眺めながら鼻の下を伸ばしている杉田くんの間抜け面苛立ちを覚えつつも、私はイベントをそこそこ満喫していた。
各社が今後の社運をかけて(?)売り出し予定の商品群に囲まれていると、お菓子のオタクの杉田くんのでなくとも心踊るものだ。商品パッケージで彩られた施設内には高校生くらいの女の子達の集団も多い。動物を模した可愛らしいマスコットキャラのストラップを手に取りはしゃいでいる様子を目の当たりにすると、若さだねぇなんて呟きたくなる。
新商品のチョコレートを摘んでいると、大学生くらいの男2人女2人グループが目に入った。ダブルデートってやつかと思いきや、そういう感じでも無さそうだ。
お互いが微妙な距離感を保ちそれぞれ好きなように場を楽しみながらも、根底ではどこか繋がっているような、そんな距離感。
その姿に、私達の過去が重なった。

戻れるのだろうか。

あの頃に。

イベントが終わって、お菓子がいっぱいに詰まった紙袋とともに私達は車に乗り込んだ。
「では、さっそく…」とお菓子袋に手を合わせる杉田君を制して、ごっちんは近くのファミレスへ車を誘導した。
「なんなんだよ、早く味わいたいんだけど」不機嫌そうな杉田くんだったが、ごっちんの「フライドポテトおごってやる」の一言に「たらこマヨ付きの大盛りな」で返した。
ちゃらんぽらんな杉田君と、堅物なごっちん。
この2人も性格は正反対なのにどこかで繋がっているのだろう。
その根底にあるものはやっぱり弾き語り部門であり、その歴史なんだと思う。そこにはいつまでも浸かっていたい心地よい過去もあるだろうし、皮膚に張り付くような冷たさを持った過去もある。でもどんな冷たい過去でも、心の中で温めておけばぬるま湯くらいにはなるのかもしれないし、触れられるくらいの温度を蓄えることが出来たら、その時はそっと掬ってあげたほうがいい。
その色を、香りを、忘れないために。
そして今がその時なんだろうな。

そういうことでしょ、ごっちん。

杉田君とごっちんが並んで座っている。
テーブルを挟んで私が座っている。
入口の方を見ていたごっちんが顔を上げた。その微妙な視線の変化に気付いた私は後ろを振り返る。
小さな女の子がこっちを見ていた。
仕事帰りなのか、白いシャツの上に紺のカーディガンを羽織っている。
たまにメールで連絡は取っていた。でもなんとなく会えなかったのは、もう私と彼女の住む世界が違ってしまったと思っていたからだ。
でも違った。
そこに立つ彼女は、服装は違えど、お化粧の仕方が変われど、あの頃の彼女だった。

「加奈」

私の声で、ポテトを睨みつけていた杉田君が顔を上げる。


No.24 ミツバチ

ガラス玉みたいな雨の粒が散りばめられた車の上で、1匹のミツバチが羽を休めていた。

IMG_0854.jpg

なんとも和やかな光景だった。

腹部の縞模様の形状から、おそらくニホンミツバチと思われる。
蜂球を作ってスズメバチを蒸し殺すことで有名なあいつである。
愛くるしい見かけによらず、なんと勇敢なやつだろう。

最近、小さな虫の小さな仕草ひとつひとつに、小さな息子に感じるのと同じような「尊さ」みたいなものを覚えることがある。

それは命に感じる尊さと、同じ種類の感情なのだろうか。

そうは言っても、自分は肉や魚も食らうし、仕事で小さな命を積極的に奪っている。
その一瞬一瞬に懺悔の感情が沸き起こるかというと、正直そんなことは全くない。

でも、顕微鏡のつまみを回すみたいにして焦点を小さな命に合わせたとたん、そこに隠れる産毛みたいに繊細な命を見るけることが出来る。
気付ける、気づけないじゃない。
時と場合に応じて、そのつまみを回せるか、回せないかだ。

虫だけに限らない。

誰に対しても、何に対しても、柔らかな赤子の髪を撫でるみたいに、慈愛をもってそのつまみを回せる人が増えればいいと思う。

そして自分も、そんな人間になりたいと思う。

【群馬】草津温泉 その3

○2日目(朝風呂にて思う)

睡眠不足でグズグズの脳みそが湯船に流れ出し、濃厚で凄惨な味噌汁が出来上がりそうだ。

朝風呂に顎まで浸かりながら、俺は昨晩飲めなかった地酒の事を想った。この悔しさを一句したためようと頭をひねり、そういえば脳みそはとっくに流れ出てしまっている事に気がついて唖然とした。

貸し切り風呂状態を期待していたが、甘かった。
旅館に泊まるおっさん連中の朝は早い。俺が風呂に入った時には2人の先客が居た。
露天風呂にいた1人が中の風呂に戻ってきたため、入れ違いで露天風呂へと滑り込む。重苦しい湯気の侵食から解き放たれ、軽やかに公園を走り回る休日の子供達のように爽やかな空気が、俺の裸体(いろんなところ)を包み込んだ。
寒い。
溶け出ていた脳みそがすんでのところで押し固められ、ことなきを得た気がする。

昔のことを思い出した。
あれは10年以上前、大学1年生だった俺は親父と2人で温泉宿に泊まった。あれは確か新潟の五頭温泉だったっけ。季節は夏。到着直後に温泉へと駆け込んだ俺は、露天風呂の中で生涯忘れられない景色を見た。
風に揺れる広葉樹。
降り注ぐ蝉の声。
のぼせた体で浴槽の縁に腰を下ろすと、暑く重たい夏の空気が清涼で軽やかな物へと一変するその瞬間。
夏が、夏という季節が、1枚の絵画のように高尚な何かに昇華され、俺の網膜に焼き付けられたような、そんな気がした。
それは素晴らしい経験だった。
その時の感情をなんとか表現したくて、夏を題材にした小説を書き始めたくらいだ。
今思うと、あれが受験を機に止めていた書き物を再開するきっかけだったのかもしれない。

何が、何のきっかけになるか、わからないものだなぁ。

風呂上がりに誰もいない旅館の内装をカメラにおさめる。

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日中は誰かしらが歩き回っているため、早朝のこの時間帯じゃないと難しい。
なんの変哲もない、面白みのない写真を撮ってるなと自分でも思う。でもこの写真だって、遠い未来にコタツでミカンを食べながら家族と思い出話をするきっかけになるかもしれない。
この瞬間が、思い出の栞になるかもしれない。

部屋に戻ると、どうやら隣室の宴会は終わったらしい。
持参したiPadで旅に記録を書きながら、残り少ない旅の時間を楽しむことにした。

朝食はバイキング。昨晩の失敗を教訓として、自分の胃と相談しながら食べ進めた。例に漏れずこの旅館の朝食も美味であり(旅館の朝食はやけに美味いの法則)俺は1日の活力を存分に補充することが出来た。
とはいえ、もう旅行も最終章。

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帰りがてらに賽の河原公園に行き、帰路に着いた。

帰りの道すがら、気圧変化の耳詰まりがとれなくなり軽く痛みも感じ始めた。どうにも治らないので数日後病院に行くと、どうやら軽い中耳炎らしい。
風邪と疲労で弱った身体が、気圧の変化に耐え切れなかったらしい。無理は出来ない歳なんだなと改めて実感する。
しかしまぁ。
「温泉いったねー!」と嬉々として語る息子を見ていると、そうも行ってられないよな、と思うのだった。

ちなみに、ピッピは微妙個体ばっかりで散々だった。

プロフィール

幕田卓馬

Author:幕田卓馬
糖、脂質、プリン体、塩分などに気を配らないといけない歳になりました…若い頃の不摂生が原因でしょうか。まだ三十路、されど三十路!
そんな男が日々の合間に小説を書いています。

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