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【茨城県】ひたちなか海浜公園~水戸~大洗水族館 その2

◯水戸のビジホ、大洗水族館、そしてめーんたいこー♪

水戸市はそこから車で30分程度の距離だった。
県庁所在地という事でけっこう都会的な建物が立ち並ぶ。ただ何処と無くこざっぱりしてるというか、スッキリしているというか、自分的にはなんとも居心地のいい都会具合だった。

ビジホは偕楽園のそばに、痩せた杉の木みたいにひっそりと立っていた。フロントに入るとウェルカムドリンクよろしく、ビールやお茶をどーぞどーぞと勧められラッキー。なんか得した気分で部屋へと向かう。
このホテルは完全なビジネス向け(しかも低予算で済ませたい人向け)であり建物もどこか古臭い雰囲気。部屋は家族3人寝泊まりするには十分に広かったが、風呂やトイレは別。
しかしそれは覚悟の上! 低予算で抑えるというのは、利便性を手放す事なのだ! しかもこの私、仕事でここ以上にクセが強いホテルにも宿泊した事もある訳で‥むしろ楽しくすらある!
ワクワクの俺とは相反し、嫁は『なんか不便なとこだなー』との思いを抱いていた事だろう。

荷物を整理し、夕食を求めて水戸市内を流離う。
徒歩にて市街地を散策するという行為に懐かしさを覚えつつ、目に入る看板の文句にツッコミを入れては嫁に白い目で見られながら、俺たちは夕食を求めて水戸の街を彷徨った。
俺自身はラーメン屋だろうが焼肉屋だろうが古びた定食屋だろうが、どんな飯屋でもドンと来い! なのだが、嫁の女子的感性や息子の好みなんかも加味するといい感じの妥協点が見当たらない。このままでは夕食難民となるのでは!? との懸念が皆の脳裏を過ぎったその時、ま開店直後の郷土料理居酒屋みたいな店を発見した。
酔っ払いの大騒ぎに不快感を示す息子だが、このタイミングならまだ客の入りも疎ら。更には店員さんが気を利かせて、少し離れた個室に案内してくれるというファインプレーを見せてくれた。
『うん、この店は正解だった』俺は心の中で井之頭五郎のように呟いた。
料理も地域性を感じられるものが多く、楽しい夕食の時間を過ごす事ができた。

ホテルに戻り、風呂に入ると、後は特にすることもない。
旅の疲れを癒すため早々と電気を消して、水戸の短い夜に幕を引いた。

翌朝、いつもの様に早起きしてホテル付近コンビニまで散歩。ホテル内の喫茶店なのかバーなのかよくわからない空間で、カレーとゆで卵と菓子パンという混沌とした朝食を食ったあと、早々と俺たちはホテルを出た。
目的地は大洗水族館、この時期は混雑必至の観光スポットだ。駐車場に車を止めるためには早々の移動が必要と判断した結果である。
結論から言うと、水族館の駐車場に車を止めることはできた。
しかしあまり水族館内の記憶がないのは、息子が薄暗い水族館を怖がって、30分も経たないうちに「もう車戻る!」とごね出したからだ。こうなってしまっては最早どうしようもない。
なんとか撮ることのできたマンボウの写真を何枚か上げる。

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マンボウって何でこんなに不気味なのだろうか。
容姿からして意味不明だし、妖怪とか未確認生命体的な未知の恐怖を感じるのは俺だけだろうか。こんなのと夜の海で対面したら失神する自信がある。ああ、マンボウ怖いマンボウ怖い‥

気を取り直して、次の目的地の「かねふく めんたいパーク」へと向かう。
途中でガルパン(ガールズ&パンツァー)の看板を発見し、ここがいわゆる聖地ってやつだと思い出す。実際のアニメは見たことないけど‥ 珍しかったので写真を撮って、オタク趣味がありそうな友人にLINEしといた。

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めんたいパークも大賑わいだった。
取り敢えず目当ての明太おにぎりと、お土産に明太子マヨネーズを購入する。工場内の製造ライン見学もできるようだが、仕事柄、食品工場の製造ラインは見飽きているため適当に流す。あ、うちの機械がついてるーみたいな事を嫁に報告して知ってる感をアピールした後、昼飯がわりの明太おにぎりを頬張りながら帰路に着いた。

予定していた旅の行程はこれでおしまい。
昼飯が少し足りなかったので、道中の道の駅で浜焼き的な物を購入した。


普段の『温泉』をメインにした旅行とは異なり、こういう観光地巡りに重きを置いた旅行もいいもんだ、と改めて思った。
子供が生まれてからはスケジュール通りに動く事が難しいって理由で、あまり予定は立てず温泉旅館でのんびりする、ってスタイルを取ってきたわけだけど、育児に慣れてきたというか、子供の扱いに慣れてきたというか。とりあえず、旅の楽しみ方の幅が広がったと実感できた茨城旅行だった。
ちなみに息子はかねふくのCMを見るたびに「ぴりっと、かねふく、めーんたいこー♫」と歌いだすようになった。
息子が楽しんでくれたのであれば、なおの事大満足である。

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【茨城県】ひたちなか海浜公園~水戸~大洗水族館 その1

2017年5月5日~6日

○ひたちなか海浜公園

「どっか行っとこう!」
それはこれから先に待っているであろう真っ黒な業務形態や、2人目誕生による外出制限を見据えた末に喉から吐き出された、「せっかくの連休を無為に過ごしたらアカン」っていう俺の心の叫びだった。

しかし金がない…
温泉旅行大好きマンの俺なのだが、安月給の一馬力ではそんなちょくちょく温泉旅館に行ってられる訳がない。
そもそも毎回温泉旅館に泊まる必要はあるのか? と俺は自問自答する。例えば民宿、例えばビジホ、例えば駐車場で車中泊…
そう、大事なのは「どっかへ行くこと」なんだ!
どっかへ行けば、俺の心は癒されるんだ!

冷めた目をしている嫁を強引に説き伏せ、俺は旅行を決行した。

今回は温泉旅館じゃなくビジホ泊。
場所は隣県なのに行ったことのない茨城県に白羽の矢が立った。

そして旅行当日。

天気は晴れ。
まごう事無き快晴である。

嫁はドヤ顔。
まごう事無きドヤ顔である。

お日様と嫁、心地よくもどこかイラっとする2つの笑顔を引き連れて、俺達の旅は始まった。

高速料金節約と、海沿いの道を走りたいというよくわからない欲望を満たすため、磐越自動車道をいわき勿来インターで下り、国道6号線を南下する。目的地はひたちなか海浜公園。今の時期ネモフィラが見頃だそうで、えらい混んでるであろう事が予想される。駐車場に停められるかどうかが勝負の分かれ目だ。
途中通過した日立市(だったと思う)のなんだかよくわかんない近未来的施設に圧倒されて「さすがinspire the nextの日立様や!」と根拠なく大絶賛したりしていると、いつの間にか海浜公園へ着いていた。

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駐車場は少し離れたところにある空き地みたいなところ。そっから20分ほど歩いてようやく海浜公園のゲートをくぐれた。身重の嫁が心配だったのだが、問題ないとの事。のんびり歩く嫁を気にしながら、はしゃぎ回る息子を追いかけた。照りつける太陽が俺のHPを奪って行く。

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公園の中もすごい人だ。
インスタバエを気にする女子達が、自撮り棒を振り回している。
カップルはいちゃいちゃしながら、よくわからない花を2人で眺めている。
大学の写真サークルなのか、オタサーの姫ってやつなのか、林の中に立つ女性を複数の男性が本気度が高いカメラで撮影している。
スポット全部ををじっくり見ていると身重の嫁が心配だったので、メインのネモフィラ畑へ足を進めた。

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空が流れ込んできとる!

たっぷりと絵の具を含んだ筆が空を青く塗りつぶし、そこから滴り落ちた雫で小高い丘が色付いていた。手前に広がる黄色い菜の花が太陽の光冠のようにも見え、対照に位置する2つの空を見たような気がした。
地上の空を分断するのは人々の長蛇の列。
宇宙へと進出する科学の隠喩か、それとも神の住まう国へと向かおうとする宗教感の隠喩か。
なんて事を考えてはみたものの、ここまでの行程で体力を消耗し切っていた俺たちは、結局この列に加わる事なく踵を返した。

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木陰に腰掛け遅めの昼食をとる。
屋台の前で30分近く待たされた挙句の焼肉弁当は、 空っぽの胃袋に染み渡る美味さだった。

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【新潟県】月岡温泉 その1

※後日写真貼り付け予定

2017年2月25日〜26日 新潟県 月岡温泉

◯1日目「妻、友人達との再会」

今回の旅はいつもと若干趣向が違っていた。

「大学の友達が結婚して東京に行く事になったの。だからその子の上京前にみんなで集まらないかって誘いがあったんだけど」
「いいんじゃね? 息子は俺が見てるし、たまには羽を伸ばしてこいよ」
「でも、今妊娠中だから体調崩れてみんなに迷惑かけたら嫌だし、もしもの時のためについて来て欲しいんだけど‥」
「えっ、マジで?」
それが旅の発端だった。

嫁の大学の友人という事は、要するに俺の大学の同期生でもある。
しかしながら大学時代から陰キャだった俺は同期生とは言っても彼女たちと会話した記憶はほとんど無く、結婚式の時にいたなーくらいの記憶しかないのである。
まぁなるようになるか、と開き直り、快く同行を承諾する。
よく知らない女性3人と会うのは些か不安ではあるのだが(俺必殺の対人恐怖症&挙動不審が発動しないか)、今回の目的地が新潟最大の温泉地でもある「月岡温泉」である事に心惹かれたのが正直なところだった。

月岡温泉は新潟県で最も有名な温泉地なのではないだろうか。
最近はイメージ写真に若い女性を起用したり、温泉フェスなるものを開催したり、小洒落た飲食店が軒を連ねていたりなど、若者特に若い女性を主なターゲットにしてマーケティングしているような感じがある。
つきおか→月丘って連想で「かぐや姫」を共通のモチーフにしているのもなんと女性的だ。
泉質は硫黄含有量が全国トップクラスらしく、お肌ツルツルの美人の湯らしい。
おっさんにとって美人云々はどうでもいいが、硫黄泉は「これもぞ温泉」って感じがして大好物である。期待が膨らむ。

当日は新潟市の大型ショッピングモールで嫁の服を買ってから温泉に向かう事になっていた。友達との待ち合わせは現地15時。
天気予報は雪→雨の予報であり、実際にも道中は吹雪、完全なる大雪状態だった。
「今回はさすがに無理だと思う」いつもの晴れ女談義だ「これだけ完全に天気が荒れてると、さすがに晴れは難しい」
そう弱音を吐く嫁に「今回ばかりは仕方ないよ」と慰めの言葉をかける俺。そもそも晴れ女なる眉唾物の特殊能力に期待などしていないし。
しかし新潟市に近づくにつれ雲は散り散りになり、大型ショッピングモールで昼食を食べている頃には春の陽気が降り注ぎ始めた。
戦慄する俺。
ドヤ顔の嫁。
晴れ女恐るべし。
そういえばこの旅の記録も4回目に突入するわけだが、全ての旅行が「途中で晴れる」という予期せぬ事態が発生しているではないか。晴れ女率、今のところ100パーセントである。

いい頃合いなので昼食後に月岡温泉へと向かう。
息子が昼寝モードに入ったので途中で時間を潰しながら、宿の駐車場に着いたのは14時30分だった。チェックインまで時間があるため、温泉街をそぞろ歩き。前回が草津だったため「え、もう終わり?」って感じだったけど、県の地酒を取り揃えた酒屋、オシャレな団子屋、出汁をテーマに商品をとりそろえたというちょっと変わった店など、旅行客には嬉しいお店もいろいろあった。
一方で「歌って踊れる行楽施設」みたいなところは見るも無残な廃墟と化していたりする。今の若者は歌って踊らないだろうし、この町の目指すところにそぐわない施設なんかは、どんどん廃れていってしまうんだろうな、なんて思った。ある種の古さの持つレトロ感は若者を惹きつけるオシャレさにつながるけれど、バブル期頃の中途半端な古さはその域まで達しておらず、原色のピンクがやけにどぎつく感じられた。これらの趣味嗜好がいずれ「レトロなオシャレ感」に変化する時は来るのだろうか。俺にはわからない。
お店は嫁の友人達と回る事になるんだろうし、とりあえずざっと見て駐車場に戻る。友人達が10分ほど遅れて到着するとのことらしく、旅館側の足湯へ3人で浸かった。
「温泉たのしいねー、月岡温泉だねー」と足をバシャバシャさせようとする息子を注意しながら、湯気を追ってのんびりと木造の屋根を眺める。お湯は草津の足湯よりも若干ぬるめだった印象。しかし硫黄の匂いが強いな。温泉感があって実にいい。

そうこうしてると嫁の友人達が到着した。
嫁を含めた彼女達4人は大学入学時からいろいろとつるんでいたらしい。3人とも嫁の写真で見たことがあるし、大学時代にすれ違った事もあるけれど、実際に面と向かって話すのは初めてかもしれない。
ちなみにそのうち1人は大学時代アパートに部屋が隣だったりする。あの時は騒がしくしてすみません。6人でチェックインを済ませ、嫁の友達3人が一部屋、俺ら家族3人が一部屋と別れる。
部屋は3人が泊まるには十分すぎるくらい広かった。ソファーのあるスペースがいい感じで、中庭の木々も眺められるため、大好き空間広縁が無いけど気にしない。
嫁と息子が友人達の部屋に行ったため、のんびり本を読んで過ごす。
ほったらかしにされてるけれど、こういう自由な時間はむしろ大歓迎だ。ソファーに寝そべっていると眠気が襲ってくるため、眠気と読書欲の鍔迫り合いをのほほんと眺めて過ごす。
どっかで温泉街散策に行くものかと思いきや、やはり女性が4人集まるとおしゃべりに大輪の華が咲いたらしい。気づけば夕食まであと1時間。そんで風呂に行こうって事になったらしく、俺もそれにならう事にした。

風呂はそこそこの広さ。黄緑に色づいた硫黄泉である。露天風呂やサウナもあって必要十分といったところだろうか。湯温は若干ぬるめに感じられた。足湯の時もそうだったし、ここのお湯はそういうものなのだろうか。
でもそんな細かい事は関係なく、温泉はやっぱり素晴らしい。これぞ日本文化の極みだ。
露天風呂で青空を眺めていると、湯気と共に天へと昇って行きそうな気分になる。
壁を隔てた隣が女湯の露天風呂になっているらしく、若い女性達の話し声が聞こえる。妻の友人達だろうか? そのキャッキャウフフな声を聞いていると、なんだかあまりよろしくない妄想が掻き立てられそうになり、いかんいかんと頭を振る。
しかし、嫁の友人達なら嫁や息子の声も聞こえていいはずなのに、2人の声は全然聞こえてこない。
まさか、息子がぐずって風呂に入らないでいる(息子は知らない場所が苦手)?
困った嫁が脱衣場で途方に暮れている?
そういえば、どこからか子供の泣く声が聞こえるような‥
そう思うと居ても立っても居られなくなり、そそくさと風呂場を後にする。風呂の前でちょっと待ってみたけど息子の声は聞こえてこないため、気のせいかと思い直し部屋へと戻った。
風呂上がりの嫁に聞いてみると息子は全然ぐずらずおとなしく風呂に入っていたらしい。
どうやらとんだ杞憂だったようだ。

夕食はすき焼き、カニ、刺身、釜で炊いたご飯、その他細々したものがたくさん。
写真の料理に加えて、追加で色々と運ばれて来た。一つ一つはこじんまりしているものの、種類が多いためそこそこのボリュームとなり、視覚的にも満足感が味わえた。
特に共通の話題が無い俺は、息子をかまいながら4人の話を聞いていた。はたから見るとよくわからない構図だろう。俺が第三者立場なら「女に囲まれて何だこのリア充男は爆発しろ」って思うけど、実際その立場に立つと、どう対応するのが最適なのか色々考えてしまってあたふたあいてしまった。極力4人の空間を作ってあげたいのだが、かと言って全く喋らないと気を遣わせてしまいそうだし、そういう微妙なさじ加減が何とも難しい。適度に頷いたりしながら過ごす。

しかし、収穫もあった。
大学時代のように屈託無く笑う妻を見る事ができたことだ。

古い友人と過ごす時、人はその頃の自分へと立ち戻る事が出来る。俺もたまに友人達と会うと、その頃のノリで笑い合い、一時だけだけど現実のしがらみを忘れる事が出来た。
自分と結婚し、地元を離れ、親になってから、妻は昔の自分を忘れたかのように日々の雑務に埋没していた気がする。しかし連続した時間を遡った時、妻はまるで少女のように笑った。
広く手を伸ばした樹木の幹は途切れる事なく地面まで続いている。
その幹に照れながら刻み付けた昔のメッセージを読み返すみたいに、俺もまた少年にような胸の高鳴りを感じた。

夕食を終えてからも、妻と息子は友人達の部屋へで楽しいおしゃべりを続けている。
部屋で一人、文庫本のページをめくりながら、俺はなんだか満ち足りた気分に浸っていた。



【群馬】草津温泉 その3

○2日目(朝風呂にて思う)

睡眠不足でグズグズの脳みそが湯船に流れ出し、濃厚で凄惨な味噌汁が出来上がりそうだ。

朝風呂に顎まで浸かりながら、俺は昨晩飲めなかった地酒の事を想った。この悔しさを一句したためようと頭をひねり、そういえば脳みそはとっくに流れ出てしまっている事に気がついて唖然とした。

貸し切り風呂状態を期待していたが、甘かった。
旅館に泊まるおっさん連中の朝は早い。俺が風呂に入った時には2人の先客が居た。
露天風呂にいた1人が中の風呂に戻ってきたため、入れ違いで露天風呂へと滑り込む。重苦しい湯気の侵食から解き放たれ、軽やかに公園を走り回る休日の子供達のように爽やかな空気が、俺の裸体(いろんなところ)を包み込んだ。
寒い。
溶け出ていた脳みそがすんでのところで押し固められ、ことなきを得た気がする。

昔のことを思い出した。
あれは10年以上前、大学1年生だった俺は親父と2人で温泉宿に泊まった。あれは確か新潟の五頭温泉だったっけ。季節は夏。到着直後に温泉へと駆け込んだ俺は、露天風呂の中で生涯忘れられない景色を見た。
風に揺れる広葉樹。
降り注ぐ蝉の声。
のぼせた体で浴槽の縁に腰を下ろすと、暑く重たい夏の空気が清涼で軽やかな物へと一変するその瞬間。
夏が、夏という季節が、1枚の絵画のように高尚な何かに昇華され、俺の網膜に焼き付けられたような、そんな気がした。
それは素晴らしい経験だった。
その時の感情をなんとか表現したくて、夏を題材にした小説を書き始めたくらいだ。
今思うと、あれが受験を機に止めていた書き物を再開するきっかけだったのかもしれない。

何が、何のきっかけになるか、わからないものだなぁ。

風呂上がりに誰もいない旅館の内装をカメラにおさめる。

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日中は誰かしらが歩き回っているため、早朝のこの時間帯じゃないと難しい。
なんの変哲もない、面白みのない写真を撮ってるなと自分でも思う。でもこの写真だって、遠い未来にコタツでミカンを食べながら家族と思い出話をするきっかけになるかもしれない。
この瞬間が、思い出の栞になるかもしれない。

部屋に戻ると、どうやら隣室の宴会は終わったらしい。
持参したiPadで旅に記録を書きながら、残り少ない旅の時間を楽しむことにした。

朝食はバイキング。昨晩の失敗を教訓として、自分の胃と相談しながら食べ進めた。例に漏れずこの旅館の朝食も美味であり(旅館の朝食はやけに美味いの法則)俺は1日の活力を存分に補充することが出来た。
とはいえ、もう旅行も最終章。

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帰りがてらに賽の河原公園に行き、帰路に着いた。

帰りの道すがら、気圧変化の耳詰まりがとれなくなり軽く痛みも感じ始めた。どうにも治らないので数日後病院に行くと、どうやら軽い中耳炎らしい。
風邪と疲労で弱った身体が、気圧の変化に耐え切れなかったらしい。無理は出来ない歳なんだなと改めて実感する。
しかしまぁ。
「温泉いったねー!」と嬉々として語る息子を見ていると、そうも行ってられないよな、と思うのだった。

ちなみに、ピッピは微妙個体ばっかりで散々だった。

【群馬】草津温泉 その2

旅館のチェックインを済ませる。
予想してた通り、広くて立派な旅館だ。

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外国人がやけに多いと思ったら、食品関係の学会的な何かが開催されているようだった。仕事がら食品関係には興味あるのだが、英語なので全然わかりませーん。
今日の寝床に案内される。
隣室の宿泊者が丁度出るところだった。大学生くらいの女子数名‥。なんとなく嫌な予感がしたのだが、まぁ気のせいだろう‥。
客室は正面に大きな部屋一つ、入って左に小部屋が一つ(右は手洗いとユニットバス)。

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大好き謎空間の広縁はなかったが、今夜はこの小部屋が俺の書斎的ポジションになるのかと胸が高鳴る。旅館は夜のダラダラ読書時間も幸せの一つなのだ。
息子をおんぶして汗だくになったため、妻より一足先に温泉に入る事とする。

強酸性の源泉掛け流し。横長の長方形の湯船は片側がぬるめ、片側が熱めになっていて、熱いのが苦手な自分には非常に嬉しい。足を投げ出しお湯の中で「うーっ」と伸びをする‥伸び広げられた関節の隙間から、押し固められた泥団子みたいな疲労が溶けて流れていく。
ああ、今俺は生きている!
生きているぞおおおお!
そんでもってお待ちかねの露天風呂。
雨上がりの空を見上げながら、今までの人生を振り返る‥なんてのは言い過ぎだけど、ここ数日にあったいろんな事を振り返る。
なんだか許された気がした。
誰にとか、何をとか、そういうのは分からないけど。

妻と息子が風呂に入ってる間、売店の日本酒試飲をチビチビ飲む。辛口の酒で一つ気に入ったのがあったので、飯の後にでも買おう、なんて事を考えていた。
さて、お待ちかねの晩御飯だ!

晩御飯はバイキングだった。
嗚呼バイキング、なんと甘美な響きだろう。
テーブルには魅力的な料理がズラリ。シェフ的な人がステーキを焼いている!
とりあえず息子の分を持ってきて、さて、いくか‥。戦場に赴く兵士のようの凜然とした表情で、俺はテーブルへと向かった。
ステーキ、角煮、唐揚げ、鶏肉のなんか美味いやつ、肉、肉、取り敢えず肉!
普段あまり食べる事の出来ない様々な肉を、俺は人目も憚らず掃除機みたいにがっついた!
そして、15分後に後悔した‥。
年老いた自分の内臓は、連日の疲労も重なって溶けかけのアイスクリームみたいに弱っていた。食べられない。クシャクシャに丸めたコンビニ袋みたいな貧弱な胃袋が食べ物を受け入れてくれない。なんだかゲンナリした表情で鉛みたいに重くなった箸を置く‥。
ペース配分をしくじったな‥。

トホホな状態で部屋へと戻る。

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ドアを開けた瞬間、耐え難い眠気に襲われた。昨日の徹夜業務で酷使された身体が、底なしの泥沼のように安寧な眠りを求めているようだった。
まだだ!
まだ終わらんよ!
俺はこの後みんなが寝静まったら温泉に入って、あの小部屋で地酒を飲みながら読みかけの本を読んで、持参したiPadで今日の「旅の記録」を書くんだ!
そう叫ぶ心とは裏腹に、身体はどんどん眠りの底に沈んでいく。
そこで俺の記憶は一旦途切れる。

女のバカでかい笑い声で目を覚ます。
時刻は深夜1時。
なんだなんだ、と辺りを見回すと、眠くて不機嫌そうな妻が「隣の部屋、さっきからすごい声がするの」と呟いた。
悪い予感は的中した。
女三人寄ると姦しい、とはよく言ったものだ。あの年代の女子がお泊まりに来れば、そりゃこうなるわな。男の声も聞こえるから、サークルかなんかの旅行なのか? 何れにせよテンションはだだ上がりだろうよ。
俺と妻はそれからあまり眠ることができず、ただぼんやりとスマホを眺めていた。
宴会は朝方4時くらいまで続いた。

プロフィール

幕田卓馬

Author:幕田卓馬
糖、脂質、プリン体、塩分などに気を配らないといけない歳になりました…若い頃の不摂生が原因でしょうか。まだ三十路、されど三十路!
そんな男が日々の合間に小説を書いています。

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